私がはらだ先生の漫画で初めて買ったのがおそらくコレ。
ちょうどBLを積極的に読むようになり始めた頃で、まだまだBLについて深く知らない時になんとなくアニメイトで
「この男の子の目ェ怖っ!」と気になりジャケ買い。
結果、あまりの衝撃に読んだ後1ヶ月くらい引きずりました。
世間から祝福されないマイノリティな愛の、どうしようもない疎外感や苦しみが読んでいてキツかった。
ペドフェリア、毒親、性的虐待…などが題材“普通”とは何か、自分の中の正しさや倫理観が試されるような漫画で、
1巻完結なのに、映画を観たような読み応えでした。
そして絵が上手すぎる。
BL漫画家さんでは体液描くのが上手い人の絵が私は好きなんですけど、はらだ先生は断トツで上手い。
未遂
タイトルが「にいちゃん」だからBLでありがちな禁断の兄弟愛的なやつかと思ってたけど
近所のにいちゃんって意味でした。
いきなり成人男性が小さい男の子にべろちゅーからの「じゃあ今度アナルセッ○スさせて」って
強烈すぎるよ!!!
初っ端から「これはそこらへんのBL漫画とは違うぞ…?」と身構えた。
確かに世間体は気になるのは分かるが、早く通報しろや母親…
再会
よく再会できたな…再会なんて相当な確率だろうに。
立って座っての大人のおもちゃ、それどこで売ってんのwwwww
男子高校生に変態プレイしないでwwww
しかし、ゆいはにいちゃんから愛情が感じられない。
あの日、ゆいに逃げられ、ゆいの母親に罵倒されてからずっとにいちゃんの腹の底には“普通”しか認めない人達に対してへの憎しみが募っていったんだろうなぁ。
でも母親からのメールには、震えるくらい怯えるにいちゃん。
情緒どうなってるの…???
でもこんな長文メールでこの内容、しかも最後に「以前のような間違った道へは進まないこと」ってあるのが、この母親、おそらく毒親やな…って瞬時に察した。
これにより情緒不安定になったにいちゃんはゆいに当たり散らかす。
こんなドギツい性的虐待、見てられんわ…(ドン引き)
「どいつもこいつも… ボクを…異常者あつかいしやがって」
にいちゃんって一人称「俺」なんだけど、この時は「ボク」なんですよね。
これはにいちゃんの本質的な、心の底からの叫びなのでしょう。
舞子
そんなに話したこともない舞子というクラスメイトの女子に告白されたゆい。
まいちゃん、普通に恋人っぽく振る舞ってるけど、何か裏がありそうな感じだなぁと思ってたら
実はゆいと似た者同士だった。
明らかに自分の彼氏がレ○プされながら電話してきて、しかも別れ話とかこんなんトラウマになるレベルやわ…まいちゃん強いな。
ゆいからの告白にも全然ドン引きする様子もなく冷静に聞いてくれて、「ほらティッシュつかって」「ねえねえ 相手どんな人なの?写真ないの?(ニコニコ)」ってサラッと言えちゃうの強い子…
まいちゃんがにいちゃんの写真を見て「あ、こいつ 知ってるわ」。
まいちゃんは、実はにいちゃんが大好きだった「おじさん」の娘。
ここで気になったのが、まいちゃんが知ってるのは子ども時代のにいちゃんだろうし
人間、子どもの時と大人じゃ顔つきとかだいぶ変わってるだろうから、そんな写真一目見ただけで分かるもんなの?っていうのがちょっと疑問。
にいちゃんの家に突撃!
にいちゃんの家にアポ無しで突撃するんだけど
ドア開けたら目の前に女子高生が「はじめまして こんにちは」って微笑みながらスタンガンバッチバチさせてるの怖すぎwwwww
でもこのまいちゃんめっちゃ好き。このLINEスタンプ欲しい。
あと、この漫画で初めてスタンガンでは人は普通気絶しないということを学んだ。
おじさん、にいちゃんにポエム綴ったりセッ○スの内容をノートに残してたり、なかなか衝撃的だな…
だってゆいがにいちゃんからされてたセッ○スと同じことやってたんでしょ?
あぁいう世間的にはかなり特殊な(?)プレイを幼い子どものにいちゃんにやってたわけ?
おぉ…マジか…(言葉が出ない)(あまり想像したくない)
ここで、今までずーっと受けだったゆいが攻め、DV彼氏だったにいちゃんが手足縛られて受けに!!??
これはリバっていうやつ?
受け攻めあんまり気にしたことないけど、リバというものを初めて読んだのもこの漫画だった。
「にいちゃん 今からアンタを抱く」
このゆいの圧倒的スーパー攻め様!!!って表情がよかった(笑)
にいちゃんは、おじさんから愛されていた子供の頃の自分をゆいに重ねて、「俺は間違っていない」「愛されている」と証明したかっただけ。
にいちゃんもある意味被害者だったのか…と思ってたら
まいちゃんが嫌そうな顔で「こいつ被害者ぶっててうけんだけど」って言ってて笑ったwww
そうだよねいくら被害者だからといって、まいちゃんにとっては人生めちゃくちゃにされた(?)し、ゆいにあんなことしたのはアカンで…。
ふつうって何?
にいちゃんは今こんなに苦しんでいるのに、おじさんは今どこで何をしているのか。
このシーンが作中で一番メンタルにきた…
こんなんだったら、まだ知らない方が幸せだったのか?
いや、にいちゃんが過去の自分と決着つけるためにも絶対必要だった。
被害者は今もこんなに苦しんでるのに、当の本人はそんなことも綺麗さっぱり忘れて人生謳歌してるのは、現実世界でもあるあるですね。
でもだからって元気一杯の明るい小学生の子どもが家から出てくるのはさすがにキツかった…お前、家庭つくってしかも子どもまでいるのかよ!!
「ふつうってなんですか?」
清々しいのか、それとも諦念なのか、悲しみなのか喜びなのか分からないようなにいちゃんの笑顔。
これは母親へ向けた台詞と表情だけど、読者に向けて訴えかけてるような気もした。
「あなたにとって“ふつう”とはなんですか?」と。
もう逃げないよ
数ヶ月話し合ったけど、結局親と分かり合えることはなかった。
でも唯一の理解者であるゆいがいてくれてよかったね…にいちゃん…
ってか数ヶ月ってかなり粘ったな。お疲れ様。
序盤ではにいちゃん→ゆいに「もう俺から逃げない?」って脅迫するように言ってたけど
いつの間にか途中で立場が逆転、にいちゃんがゆいから逃げるようになっていった。
ラストの「もう逃げないよ」でだいぶ救われた…
にいちゃんがこんな穏やかそうに笑ってるところ、初めてじゃない?
本読まないから最初「檸檬を本屋に置いてくれば…」の意味分からんかった。(あとでググって「なるほど!」ってなった。梶井基次郎の「檸檬」ね!)
薬はただの精神薬?それともヤバめなドラッグ?(精神薬だと信じたい)
まとめ感想
異性愛者、同性愛者、小児性愛。
祝福されない愛は認められないのか?
少し周囲と違うだけなのに、なぜかこっちが迎合して必死に溶け込まないと生きていけない。
BLで小児性愛という、他ではあまり見かけないようなテーマで、「結局これは幸せなのか?」と永遠にぐるぐる考えてしまう。
彼らからしたらハッピーエンド(?)なのでしょう。
さまざまな葛藤や妥協を乗り越えて、2人とも満足するような関係になれたことだし。
ただ、ハッピーエンドと言うには不穏すぎる終わり方なんだよなぁ。
初読時、「何この終わり方!?ハッピーエンドのはずなのに、主人公の目が完全に死んでるラストってどういうこと!?」と衝撃でした。
ゆい、「認めてもらえないのなら切り捨てるしかない」ってハッキリ言ってるけど、未だに両親には「彼女がいる」と嘘ついてるんですよね。
結局まだ後ろめたい気持ちや受け入れられないのが怖いっていう臆病さがある。
ゆいってサバサバしてるように見えるけど、結局バレて家族から見放されることに対してビクビクしてるのかな?って思う。
それに対して、にいちゃんは家族とは縁切られたから潔いんですよね。
もう失うものがないし、親から縛られることもない。
結局、まいちゃんは終始ずーーーーっと強かだったな。
彼女も大学生活を謳歌しまくってるようで何より(笑)
おそらくこの漫画で一番精神的に強いのは、彼女なのでしょうね。