1巻で完結する漫画なんだけど、なんかもう…まるで映画のようだった。
「バナナフィッシュ」が好きな人なら絶対刺さる系統の漫画。
外人の名前、というかカタカナの名前が覚えられない人間なので、基本的に日本人が出てくるBLしか読まないんですけど、これは買ってしまいました。
なぜなら絵が美しすぎるから…!!!
こんな絵が綺麗なBL漫画初めて読んだ…(特に瞳の描き方)
2人の傷ついた若者、アランとヘイデンの自由を求める旅のお話。(アランとヘイデンという名前一生覚えられそうにない)
「バナナフィッシュ」みたいに銃でドンパチやるわけじゃないけど(笑)
結構ガッツリ重いストーリーなので、苦手な方はご注意ください。
アランとヘイデン
狂信的で過保護すぎるカトリックの家に生まれたアラン、
家庭が崩壊した経験をもち、今は放浪癖のあるヘイデン。
どちらもタイプは違えどとんでもねぇ毒親。
果たしてどっちの方がマシなのだろうか…と、そんなことを考えられる余裕があるという自分の残酷さにも反吐が出そうだけど
2人が一緒にいて会話してる空間は本当にとてつもなく尊かった。
まるで他者を介入させない、2人だけの心安らぐ実家のような安心感みたいな。
2人にとって、2人でいることが本当の意味で実家だったんだろうな。
逃避行
アランが家出を決意し、一緒に逃亡(?)するシーン、台詞が一個もないのいいな…
この2人の関係はなるべくしてなったというか、基本的に互いに惹かれ合うものしかもってなくて
2人でいることで初めて人として完成する、という感じがある気がする。
でもアランは家出、ヘイデンはアランを誘拐したという罪悪感が心の根底にあって、完全に休まることがないのがツラい。
自由を求めての旅なのに。
あと、そんなさらっとマリファナを吸うなや……
てっきりずっと友人関係のままで話が進むかと思ってたけど、性的な関係ももつようになるのかよ。
個人的に、普通以上の感情をもつ友人関係でいてほしかったかな…
でも旅を続けていくうちに、2人とも明らかに退廃してダークなところへ堕ちていく雰囲気があったから、これはこれでよかった気がしなくもない(笑)
マリア
マリアが出てきて「あ、これで良い方向に行けそう〜♪」とか思ってたけど
そう簡単にはいかなかった……
なんでだよ!!
2人にはもう残酷な現実を背負わせないでくれよ!!
普通に幸せになってほしいのに!!!
マリアが銃持って追いかけてくるところホラーすぎて
怖い怖い怖い怖い怖い!!!ってなった。
ヘイデンがマリアを轢いてから、そこが分岐点になって話が大きく別方向へ向かっていった気がする。
あの時マリアを轢き殺してなかったら…って考えても
でもマリアの銃には弾が2個入ってて、おそらくアラン殺して自分も死ぬつもりだったっぽいし……
結局どっちにしろ最悪だった。
地獄の展開
ウィリアム神父との再会という地獄のような展開。
両親に助けを求めて電話をしたアラン。
息子が家出したっていうのに、全然成長しないなこの両親…
ジョーンズ警部があぁ言ってたのにアランパパが酷すぎて殴りたくなった。
ジョーンズ警部も全力で「優しい言葉をかけてやれって言ったでしょおおがあああああ!!」って叫んでくれたらよかったのに。
どうでもいいけどアランの銃の上手さに戦慄
めっちゃ綺麗にキリストの額ぶち抜くやん…
これはハッピーエンド?
ヘイデンはアランを誘拐してマリアを殺し、アランは昔自分をレイプした神父を殺し…
本当の意味で2人は対等になれた…のか?(こんな対等のなり方嫌だ)
こんな終わり方なんて…って思うけど、そんなの知らねーよって人から見たら2人は“ただの人殺し”だろうし。
私はこの終わり方には納得している。
今まで死ぬように生きてた2人だけど、彼らだけの本物の家を見つけて
きっと、ずっと探していた幸福を胸いっぱいに抱きしめながら海に沈んでいったのでしょう。
まとめ感想
神なんていない。
信仰、祈り、贖罪、家庭、束縛…と、重めのテーマで閉塞感のある話だった。
あの時マリアと出会わなければ…とか、父親があの時違う言葉をかけてくれてたら…とか、
ちょっとした出来事がいつの間にか多大な影響を及ぼし、こんな結末になってしまったよ…
どれだけ祈りを捧げても、やっぱり神なんてどこにもいなかったけど、
彼らなりの最高の幸福を手に入れたから、それだけで満足。
「バナナフィッシュ」はアッシュの傷ついた心を英二の巨大なアガペーで包み込む話だったけど
この2人は互いが家庭で傷ついて、業を抱えながらも一緒にいることで傷を埋め合わせる愛し方をしていた。
そうか、「遥か遠き家」というタイトルはそういう意味だったのか…と、最後まで読んでやっと意味が分かりました。
↓八田先生の漫画で、「遥か遠き家」と同じ作者とは思えないくらいのギャグ漫画(非BL)ですが、こちらも是非。